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チロル取水工の設計Pickup

 過去にチロルスクリーンの設計の考え方について述べてきました。
 今回は具体的なやり方についてです。
 チロル取水方式は小水力のスタンダードでしょう。
 しかし、取水幅や延長をどうやって設計するのか?
 具体的な方法を私は見た事がありません。
 唯一あったのは、水理公式集くらいですね。
 でも、スクリーンバー形状とかスクリーン勾配などは限定された水理実験でのデータであり、応用するには設計者の知見が必要となります。

 以下、サコダ流の考え方について述べます。


 では、チロル式取水工の取水幅Bはどうやって計算するのか?

 水理公式集では、縦格子形底部取水工の規模については、Mostkow(モストコフ)の式を用いて算定する とされています。

 取水工長さLf(上下流方向の長さ)については、チロルの必要高さは相当高くなることから内部の点検・補修作業性に考慮して0.5~1.0mで固定し、取水幅Bを逆算します。

 Lf = Q/(μ・B・φ・ √2gH)

 上式を変換すると、

 B = Q/(μ・Lf・φ ・√2gH) となります。
B :チロル取水工の取水幅(m)
    Lf:全流量を取水するのに必要な取水工長さ
Q :最大取水量(m3/s)
μ :流量係数
     流量係数はチロルスクリーンの勾配により、以下のとおりの実験値が示されています。
勾配 流量係数
水平     0.497
1/5      0.435

     ここで、勾配が垂直に近づくと 0 となるが、安全側に考慮して勾配45°を 0.000 として近似式化します。
 
    φ:取水路の開度(Σs/B)
    b:スクリーン桁幅(mm)
    s:スクリーン純間隔(mm)
    H:上流側の水頭(m)
     長方形せきの越流量より求めると、H(エネルギー水頭)=越流水深h+接近流速水頭v2/2g として算定されます。
     h=(Q/CB)2/3 です。
      h:越流水深(m)
      Q:最大取水量(m3/s)
      B:せき幅(m)
      C:越流係数
       越流係数は、せき頂長Lとhの関係から求めます。

次に、安全率を設定します。
 モロトコフの実験式はケースによっては数倍の誤差が認められるとされています。
 従って、2倍の安全率を見込むものとします。
 また塵芥・凍結によるスクリーン閉塞を見込む必要があるため安全率を設定します。
 塵芥はスクリーン勾配が急であるほど下流へ排出され易くなりますね。
 従って、安全率はスクリーン勾配が急であるほど軽減するものとし、30°で安全率1とします。
 凍結については、取水地点の過去10ヶ年最低平均気温が-5°以下の年がある場合は、安全率2とします。

 上記の各要素を掛け算して安全率を求めます。

 この安全率を B に掛け算して取水工幅を求めます。

 ちょっと、ややこしいかな?

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