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水圧管路の設計 パート-3Pickup

 「凍結深度」ってご存知でしょうか。
 寒冷地では冬期に水道管が破裂したりするとかニュースになりますね。
 あれは水道管が地中から建物に入る露出配管部が凍結してしまい膨張して破裂してしまう現象です。
 露出している部分は水の流れが無いと凍結してしまいますが、土中の配管は凍結しない深さまで埋設されていますので心配ありません。
 その必要深さを「凍結深度」と言います。
 専門家であればご存知でしょうが、一般にはなかなか未知でしょう。

 電力会社が所有する水力発電所の場合は、ヘッドタンクまで導水した後に水圧管で発電所に落とすのが一般的なので、ヘッドタンクまで来た水は凍結する暇もなく水車を廻した後に放水されます。
 要するに、何トンもの大水量なので土中埋設するよりも導水路方式を採用する方がコストが安いからです。
 大水量なので凍結はしないのですが、スノージャムと言う厄介者がいます。
 スノージャムは冬季の渇水期に大雪が降ると雪が解けずにヘッドタンクや導水路に入ってしまうと腸閉塞みたいな現象を起こして水が止まり発電が停止してしまうんです。最悪の場合、導水路から越水して被害が拡大することもあります。
 北海道ではスノージャムの影響もあり冬期には河川凍結等による発電停止などにより稼働率が落ちるとか。

 小水力でもスノージャムへの注意は必要ですが、それ以上に埋設水圧管の凍結に注意です。
 無論、発電していて水流があり、ある程度大きい水圧管口径であれば問題ないと思いますが、事故・点検や渇水停止により水流が止まると凍結する危険性が高まりますので対策が必要になります。
 そのためには、土が凍結する深度以下に水圧管を埋設する必要があります。
 以前設計した近畿某地点では埋設土被り0.6mに対して凍結深度は0.4m程度だったので、2シーズン目ですが問題は発生していない様ですね。
 何故かと言うとこの地点は標高400m弱で左程気温の低下は無いからです。
 
 気を付けないといけないのは、取水標高が1000m以上となる地点ですね。
 緯度の高い地点では平気で日平均気温が-10℃になりますので、凍結深度は1m以上になってしまいます。
 土被りが深くなると当然掘削などのコストが掛かるため事業性が低下してしまいます。
 また、保守管理も手間暇かかりますね。
 しかし、これは発電所の保全上仕方ないと思います。 

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