サコダ小水力設計は、小水力発電コンサルタントとしてエコで自然に優しい小水力発電への関心が高まる中、導入に際しての技術検討や複雑な法規制のしくみなどに戸惑い、足踏みされている方々からのご依頼に応じて、小水力導入に際しての基本設計や事業性評価を行い、最適な小水力発電施設導入のご提案を致します。FIT制度もいつまで続くのか分りません。事業者は決断する時です。
これは失敗なのか少し迷いますが、チロル式をご検討されている事業者さまに対して敢えて公表したいと思います。
以前のブログ「取水工チロルスクリーンの設計 パート-2」でも書いていますが、縦格子形底部取水工の規模については、Mostkow(モストコフ)の式を用いています。
復習します。
Lf= Q0 / μBψ √2gH
Lf:全流量を取水するのに必要な取水工長さ(m) →上下流方向の幅
Q0:最大取水量(m3/s)
μ :流量係数
B :水路幅(m) →左右岸方向の長さ
ψ :取水路の開度(s/(s+b))
s:スクリーン純間隔
b:スクリーン桁幅
H :上流側水頭(m)
ここで支配的なのは、ψ:取水路の開度です。
s/(s+b) なので、開度が大きければ大きいほど取水効率が良いことがわかりますね。
例えば、
s=10mmに対してb=100mmの時のψは0.091 です。
s=10mmに対してb=10mmの時のψは0.50 です。
この事例では、b:桁幅を少なくすればLfは約1/5になるってことです。
桁の幅を少なくすると断面力が低下し土石流への安全性に問題がありますが改良式スクリーンはクリアしています。
ここで、課題となるのは寒冷地におけるチロル式取水工です。
標高1000m越えの氷点下15度位の世界になると、北海道のように河川が凍結し始めます。
水深が浅くなり水の動きが少なくなると徐々に凍結し、スクリーンを塞いでしまいその氷の上を流下するため、取水量の低下が起こると考えます。
では、凍結しない程度の水深(水流)を確保しないといけません。
冬季渇水期は水車型式によりますが最大使用水量の15~30%まで低下するので、そのときの水量の水深を約3cm程度に確保できるチロル取水幅にすれば良いのではと考えました。
約3cmで良いのかは感覚です。実験と経験が必要ですね。。。
このブログは先年12月に発電開始した「西俣沢小水力発電所」の責任者がポロリと漏らしたことが切っ掛けです。
「凍結が怖いので取水工幅9mを仕切り板入れて4mにして冬を迎えます!」とのことでした。
ここのチロル取水工は標高約1200mの山間僻地であり積雪量は2~3m程度と、冬季は人を寄せ付けないため、取水工幅は安全率を見込んで9mで設計していました。
責任者の言葉を聞きそれは良い考えだとこの時に気付きました。
理論的にベターですね。
最低使用水量に取水工幅9mでの水深は15mmに対して、取水工幅4mでは26mmになり凍結に対する安全性が高まります。
では、今後の発電所も毎年仕切り板を入れる作業をするのもしんどいなー と考えて最適な取水幅をご提案することにしようかと考えています。
今回ご紹介した失敗談は失敗とは言えない領域とは言え、お客様にご心配を掛けてしまい申し訳なく思っています。
しかし、私自身の知識・能力の向上に繋がりました。
栗〇様 有難うございました。