サコダ小水力設計は、小水力発電コンサルタントとしてエコで自然に優しい小水力発電への関心が高まる中、導入に際しての技術検討や複雑な法規制のしくみなどに戸惑い、足踏みされている方々からのご依頼に応じて、小水力導入に際しての基本設計や事業性評価を行い、最適な小水力発電施設導入のご提案を致します。FIT制度もいつまで続くのか分りません。事業者は決断する時です。
姉川ダム案件が公募され1/9(金)に企画書締切りとなり、2/2に事業者が決定しました。
私はこの計画の生みの親でありますが、今までは滋賀県さんや関係会社にご迷惑が掛らぬように静観しておりました。
もうエエかなと思いますので、この計画の経緯やポイントなどについて書きたいと思います。
「私の原点」に書いたとおり、平成24年の春にダムカードを貰いに姉川ダムを訪問した際に、そのポテンシャルの高さに気づきそれから滋賀県さんと事前協議を行っていました。
この会社を設立し暫くしてから、公募にするとの情報が入りやはり公共ダムの使用については、公募にすることが公平性の観点から求められたようです。
昨年正式に公募が発表され弊社に数社から協力依頼など問い合わせがありましたが、当然関電さんも応募されるでしょうから関電OBとしての立場から辞退しました。
もう締め切りとなったので、影響ないと思いますのでこの計画のポイントについて少し述べます。
1.ダムアロケーション
公募資料にもありますように、ダムの落差利用に伴う効用を負担金として県に支払う必要があります。この計算方法が複雑なので県が指値を提示していましたね。概略するとダム建設事業費の現在価値(簿価)にアロケ比率を乗じた金額になります。
2.最適規模の検討
最大出力をどの程度に設定するのかが、事業計画の胆となります。
ここの場合、ダム水位の変動範囲と放水口水位変動範囲(減勢池水位)、放流量との関係をダム水位データと各種水理計算により解析して一番経済的となる使用水量を決定しました。(所謂ボトム出し作業)
その結果、最大出力約900kWとなりましたね。
苦労したのは、減勢池水位の変動量の計算です。
副ダムが2つあり、径1mの管で連通されていますので、水量が増えると徐々に水位が上昇します。水位が上がると有効落差が少なくなり発電量が減少するため正確な計算が必要でした。
この計算式とダム水位から総落差を計算して、損失落差を差し引き有効落差を計算する訳です。
そして、使用水量を数ケース設定して発電量を計算させます。
一方、事業費も使用水量により変動しますのでこれもパターン化し、各ケースのP-IRRと累積純利益から最適案を決定する訳です。
3.事業費の算定
事業費で一番大きいのが水車発電機、配開装置関係の電気工事費です。
水車形式は、落差や水量および現地状況からフランシス水車が最適です。
試算では約4億円でしたが、水車メーカーさんはバブル期なので高止まりするかも知れません。
では、水車機器をどこに配置するかです。
この計画の胆でしたが、バルブ室内に配置する計画としました。よく見ると馬鹿に歩幅の広いコンクリート階段が設置されており、これを撤去し鋼製の階段に作り替えれば広いスペースが生まれます。
当初はそこにバルブを移設して水車はバルブのあった位置に設置する計画でしたが、バルブの移設にも品質的な問題があり最終計画では、現案となっています。ロスが増えますので使用水量も増やさないといけませんね。
コンクリート階段の撤去に伴い、山側の壁の強度が懸念されましたので、ロックアンカーにて補強することにしました。これにもかなりのお金が掛りますが、構造検討結果によっては軽減可能かと思っています。
放水口は既設バルブや放流管との標高・位置を考えると、バルブの真下をコンクリート掘削して減勢池に放水する案がベストでしょう。
問題は、仮締切です。
減勢池には下流利水者のため常に水位(放水)があるため、迷った末に鋼製角落しを仮設することにしました。工事する時期も課題ですしこれにも多額のお金が掛りますね。
4.系統連系
ダム直下にダム電源用の高圧配電線がありそこに連系可能ですが、問題は線の容量とバンク容量です。逆潮流対策で負担が発生するかも知れませんので、関電への接続検討結果によります。
5.運用
ダム維持流量=発電使用水量なので、正確な制御システムが必要です。
またシステムダウン時の対応方法などしっかりとした運用ルールも策定しないといけません。
万一、対応がまずいと下流の利水者から損害賠償など請求される虞がありますので、これも胆でしょう。
工事のポイントはこのようなものでした。
維持流量発電と言うと所謂「水車ポン付け」だと安易に考えがちですが、この姉川ダムについては大変難儀しました。水車メーカーさんの技術だけでは難しいと思います。
ダムの運用を担うことを考えると、発電運用などを知り尽くしてメンテナンスや運用を自分たちでしっかりとやれる技術や体制が整った事業者がベストだと思います。中途半端な事業者では到底姉川は無理でしょうね。
事業候補者は「山室木材工業株式会社」と「イビデンエンジニアリング株式会社」の連合体 とありますので、メンテナンス体制なども十分かと思います。
完成したら是非見学に行こうと思っています。